草座(そうざ)
紀元前インドの釈尊が菩提樹下の金剛座で悟りを開いた時に、周囲の者が釈尊の身を案じ、敷物の代わりに「吉祥草(きっしょうそう)」を並べたとの故実によるもので、現在のかたちになったのは中国に仏教が伝わってから中国内で考案されたようです。
我が日本では、寺院の特別な行事の中でも最高の僧侶が使用される座具(仏具)のひとつであって、真言宗の大寺院では使用頻度が多いと聞きますが、宗派に関わらず大寺院などの特殊な行事に限定されている様です。
基本の大きさは、縦1尺3寸(約40cm)・横6寸6分(約20cm)の畳ござを一枚物・二枚重ね・三枚重ねをそれぞれ二組並べて作られます。一枚物の中央に綿は入れないものの錦や金襴等を使って四方の額の形をつくります。また、左右には長く紐を垂らしたものです。この垂らした紐は「草」を表現しているとのことです。
また、この草座は二つに折り畳むことが出来るように造られています。その為に表面をつけた畳ござ以外に、中央部分はござ二枚分、底面部分はござ三枚分、合計、同じ大きさのござを巧みに六段に重ねて構成されています。
写真の草座は、奈良市の古い寺院より依頼頂き作らせて頂いたものです。草座の大きさは1尺(約30cm)四方で、三色に染めた紐の長さは、1尺3寸(約40cm)です。中央には寺紋の裂を使用し、額は繧繝錦を使いました。
この草座の使用方法に二種あり、厚畳(あつじょう)の上に敷かれて、その上に導師が座る場合と、この上に経典などを置きお勤めをされる場合があるようです。
本来、釈迦が使用した吉祥草を進化させた形のものなので当然、関係深いもので仏教の礼拝時に使用する最高の敷物であろうと思いますが、現在では真言密教など一部の宗派や、大寺院の特殊な行事での作法のひとつとして使用されているようです。