有職畳を造る時に、周囲に取り付ける錦の額縁の作業で四隅を合掌にして重ねることがあります。先に下縫いをして返した錦の上に、正面の額の錦を縫い付け、重なる部分を45度に折りたたみ、時に錦の模様によっては、重なる部分の模様を一体化させることがとても美しいものです。模様を合せる、筋色を揃えるなどバランスのとれた配置は、とても繊細なものです。しかし、それ以上に下ごしらえの段階から緻密な手間と技術が必要となります。また、その重ねた錦を絹針の先を湾曲にまげて、絹糸でのくけ縫いは最も緊張する瞬間です。


下左の写真は「龍鬢(りゅうびん)の地敷き」で、右隅で重なる薄水色の文様と、黄色の文様を重ねてひとつにしたもの。下右は「茵(しとね)」で、これも双方の錦を合せて花模様にしたものです。


下の写真は、神様の鎮座する八重畳の製造過程。繧繝錦(うんげんにしき)の縁を付けた上敷きを七枚重ねた側面の模様をひとつにしています。

また、高麗紋(こうらいもん)を畳に付けて複数の畳を敷き詰める時も、隣り合う畳の縁模様を合わせて、一つにすることも確かな経験と技術が必要になります。高麗紋には大紋・中紋・小紋があります。特に高麗小紋は模様を合せるのが最も難しく、生地の張り具合で文様の線が一体化できなくなることも多くあります。
下の写真は、高麗中紋の畳。下次の写真は高麗小紋の畳です。

